皆さんは「Vtuberは魂を好きになるコンテンツ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。僕なりに少し足すなら「Vtuberはキャラクターを通して魂を好きになるコンテンツ」といった感じ。
まぁあるだろう。外見を抜きに、中身を純粋に評価してもらえる。よく美点として語られる部分だ。
でも僕はこの言葉について、理解はしていても納得まではしていなかった。
Vtuberを2017年末に初めて知ってから、その言葉が生まれ、今にいたるまでずっと考えていた。
例えば、アバターの見た目は動画の再生数に影響する。富士葵ちゃんだったり今酒ハクノさんなんかを見ればわかることだ。
当然といえば当然なことではある。だって可愛い(かっこいい)方が良い。アニメだったら作画の良い方が嬉しい、至極単純。
でもそれって、Vtuberというコンテンツで同じことを言ったらやっぱり中身を見ていないことになる。オタク(クソデカ主語)が忌避したはずのルッキズムがそこにはある。
Vtuberは "アバターの容姿が良ければ" 魂を好きになるコンテンツなんじゃないだろうか。
また、キャラクターというフィルターで抽象化された彼らを楽しむ僕は、実際にそのフィルターが取り払われた、100%生の魂を前にしてどう思うんだろう。見た目はもちろん、アバターを脱いだことで話せる言葉が変わるはずだ。
実際に「中の人」を見た時に、僕は「好きだ」と言えるのだろうか。
バーチャルだろうとリアルだろうと関係ないって本当なんだろうか。
そういう疑念を悶々と抱えたまま過ごしていた。2019年7月20日、VIRTUAFREAK - summer night - に行くまでは。
Vtuberと、Vtuberが好きなクリエーターと、Vtuberが好きなファンしか集まっていないこの音楽イベント。
ずっと行きたくて、でも予定が合わなくて第4回目のsummer nightでやっと参戦出来た。
正直予定が入ったりしていたのだが、フォロワーさんの後押しもあってすっぽかすことが出来た。
それにメンツがメンツだ。
KMNZは生出演、BatsuさんといえばVirtuaREAL.00で愛のあるDJをかましたのが記憶に新しかった。ワニとコウモリは次にいつ見られるかわからないし、なんたって今や「若きコンテンツメーカー」呼ばわりされる元じーえふがエハラミオリ名義で初参戦。
行かなきゃいけないという気持ちが大きかった。
実際にその場所に立ち、音楽に合わせて跳ねまわっているとやはり「来て良かった」という思いが強かった。
ASOBINITEというイベントのワンフロアをジャックする形で行われた今回のバーチャフリークは、BOXと呼ばれる大きなテントの中で行われた。
もうオタクの熱気がこもりまくっていた。
www.youtube.com
みんなで汗だくになって手を挙げて、飛び回って、叫んで。
休憩する暇なんてなかったけど、しなければ倒れると思い外に出る。ハイネケンと水はもちろんバカ高かったけど一気飲みした。
KMNZまで無事に終わり、迎えるは今回一番楽しみにしていて、なおかつ一番不安だったワニとコウモリだ。
ワニとコウモリのコウモリ成分は、コーサカの「中の人」である高坂はしやん。
歌ってみたを聞いたこともあるし、Twitterもたまに見に行くし、写真だってその際に見る。
でも、直接自分の目と耳で彼を認識する時が来た。
"実際に「中の人」を見た時に、僕は「好きだ」と言えるのだろうか"
この疑問を真っ向から試す機会だった。
彼の動きに重なるようにコーサカの姿が見えた。
高坂はしやんがラップをする時の身振り手振り、声。それらは紛れもなく、大好きなコーサカだった。
色んな理屈や感情を抜きに、目の前の彼は高坂はしやんであり、コーサカなんだと納得させられてしまった。
彼の言う「線引きは大事だけど境界を作る必要はない」という言葉が、胸のあるべき場所にストンと落ちる音がした。
そして何より観客全員がこれまでと同じように、いやそれ以上に手を振り上げて、踊って、声を出していた。
気付けば自分もその一人だった。先ほどまで考えていたことなんて全部忘れて体を揺らしていた。
ワニとコウモリが終わり、ステージにかかる薄い布の先に見えるばーちゃるねこさんの姿。ついさっきBOXの外で見た気がする。
休憩に外へ出ると、出演Vtuberの声をした誰かが話しているのが聴こえた。
そしてVtuberとの親交が深いエハラミオリが休憩スペースの椅子でスマホをいじっている。
バーチャルとリアルの混じるとてもメタな空間だった。
それでも、いやだからこそ彼ら彼女らの生み出す音楽を通じて踊り狂えたことが嬉しかった。自分は紛れもなくVtuberを構成している全てが「好き」なのだと思えた。細かい理屈なんて吹っ飛ばすほどのモノをステージの上の彼らから、そして集ったファンから受け取ることが出来た。
正直、僕個人のこんな感傷は公開すべきではないと思っていた。なんとか言語化しようとして出来たのは一人よがりで、ぐずぐずと気持ち悪いことばかり書き連なっているこのブログ記事だ。
それでも、やっぱり僕は僕と同じような人にバーチャフリークに来て欲しくなってしまった。
考えすぎてしまう、理屈を捏ね回してしまう、拗らせてしまって素直に「好き」と言えなくなってしまった人。
そういう人は一度、騙されたと思ってバーチャフリークに来て欲しい。
summer nightは特別回だ。ワニとコウモリが次も出るわけじゃないし、ホームスペースである秋葉原エンタスはsummer nightの会場であるagehaほどごちゃついた場所ではないと思う。
しかし出演するDJやVtuber、そして集うファンの熱量の果てしなさは変わらないはずだ。
あんなに「好き」という感情が、プラスのものが溢れた場所を僕は知らない。その空気は、きっと自分の中の何かを変えてくれる。
次のバーチャフリークで、そんなあなたと一緒に踊れたらと願っている。